
長野県信濃町。動物や虫など、その地に棲まう「小さきもの」にまなざしを向けながら、人の暮らしと重ねて句を読んだ小林一茶が生まれた土地でもあります。東京から信濃町に移り住んだ8 Hachi Media編集長のぶさん。この町にすまう命と人のくらしを季節の巡りとともにお伝えします。
「どれにする?」
「これも可愛いんじゃない?」
「これは何ていう植物なんですか?」
選ぶ、ということはいくつになっても楽しめることの一つなのではないだろうか。数人以上の大人がちょっとはしゃぎながら材料を選ぶ様を見ているとそんな気がしてくる。
信濃町総合体育館内には木育ルームというものがある。「なかよし」と名付けられたそのスペースでは子育て支援を目的に親子を対象に様々な催しが行われている。今回のぶさんが体験するのはクリスマスリースづくりだ。
ここは「木とふれあい、木に学び、木と生きる」をテーマに信濃町産の木材をふんだんに使った温もりのある空間だ。木のおもちゃや、檜のボールプールなど木を使った遊戯スペースに絵本も飾られ、読み聞かせが行われることもあるという。無料で支えて育児相談も行っている。
まだ目の離せない年齢の子ども達はボランティアの方々が面倒を見てくれている。安心して任せられるから、保護者の方々にとってこの時間は、ちょっとした息抜きだ。リースづくりの材料に、と地元の造園業の方が端材を持ち込み、講師も勤めてくれている。信濃町には自分の仕事の延長上に、地域に何かを還元する活動をされる方が多い気がする。無理なく自然体な関わり方は、参加者にとっても気軽に参加できるからありがたい。
町土の約72%が森林の長野県信濃町。高性能林業機械の導入による造林・搬出、自伐型林業の推進、森林セラピー活動など、持続可能な森林経営が活発な地域であることも、この町の魅力の一つだ。それだけ「木」に囲まれているのに、なぜ木育ルームがつくられたのか。その答えは意外なものだった。
『信濃町で暮らしていると、自然に囲まれているのだけれども、「自然」を感じられる室内空間は少ないんですよ。意外と家の中は都会の人とあまり変わらないというか。だから家庭の中でも自然に触れる体験を届けたい、というのがこの場所にこめられている想いなんです。』
「魚の目に水見えず」ということわざがある。魚にとって水は常に身近にありすぎて、水の中にいることに気づかないことから、大切なものほど見えなくなることを表すときに使われたりする。正にそんな感じなのかもしれない。
リースづくりがもうすぐ終わろうとしている。お母さんもここでは一人の参加者として純粋に楽しんでいる。見守ってもらえているからこその一人時間。子どもにとっても刺激のある体験となり、ボランティアの人たちも笑顔が増える。それぞれのふれあいが、温もりとなって心休まるひとときが過ぎていく。

Illustration | Shinobu Mitsuoka
「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです
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