Hachi Medida

vol.4 信濃町fanclub「そば部」

メイン画像

【この記事の要約】

  • 2026年5月23日に長野県信濃町で開催された「そば部」の第一回目の模様をレポート。

  • 「そば部」とは単なる農業体験ではなく「地域という畑をみんなで耕す」ことを大切に、5月から11月までという長い期間をかけてそばづくりを通じて、風土を体感しながら理解していく特別な部活動。

  • 自分たちが作業する場所を、自分たちが整えるところからスタート。耕作放棄地など地域の課題を体感しながら共同作業に取り組み、地元の人とのつながりも育む機会に。畑仕事の後に毎回開催されるミニ講座は体でも頭でもそばを知ってもらうため。ユニークな構成もそば部の面白いところ。

    読了時間:約3分


長野県信濃町の名産品の一つであるそば。 黒姫山などの山麓に広がるこの土地は、水はけの良い「火山灰地」で、昼夜の寒暖差によって「朝霧」が発生しやすいという特徴があります。そのため「霧下(きりした)そば」と呼ばれ、非常に風味が豊かなそばとして高い評価を受けています。

さらに雪国ならではの保存食「凍り(こおり)そば」や、450年の歴史を持つ伝統工芸「信州打刃物」のそば切り包丁など、この町にはそばを取り巻く知恵と歴史が今も息づいています。

そんな蕎麦処の長野県信濃町で2026年5月23日に「そば部」の第一回目となるイベントが開催されました。豊かな風土と歴史を五感で味わう特別な部活動であるそば部。種まきからそば打ち、そして大宴会までをみんなで作り上げることを半年かけて体験します。

「農業体験」の枠を超えた地域と歴史、そして人の営みが織りなす心豊かなひとときの模様を8Media編集部がお届けします。

地域という畑をみんなで耕す

信濃町ファンクラブが運営するそば部。8 Hachi Mediaの編集長でもある地域おこし協力隊の光岡忍さんが企画&コーディネーターとして参画しています。

その活動を師匠として支えてくれるのは、斑尾山麓の荒瀬原地区で長年農家を営む静谷 貢(しずや みつぐ)さんです。静谷さんは信濃町に移住し、古代米の美しさに惚れ込んで農業の道へ。その後も炭焼き、日本ミツバチの養蜂、環境に配慮した合鴨農法など、「面白い」と思ったことには何でも挑戦してきた達人で、そば部の活動拠点である寺院「即心院」の管理人でもあります。

そば部が大切にしているのは単なる農業体験ではなく「地域という畑をみんなで耕す」こと。「苗を植える」「そばを収穫する」という節目を体験するのはもちろん、地元の方々の助けを借り、互いを知り合いながら、自分たちが活動する場所を整えるところから始める。そうすることで、そば作りを一時的な体験ではなく、5月から11月までという長い期間を通じて、風土を体感しながら理解していくことが特徴的な取り組みです。

はじめの一歩はお片付けから

当日集まった参加者は活動を手伝ってくださる地域の方々や、信濃町に移住してきた方、信濃町ファンの方など様々。中には移住して1ヶ月にも満たない人たちも!

今回はそば部の活動拠点づくり。二手に分かれて畑の雑草を刈り取りと、お寺のお掃除を始めるところからスタートです。

整えられた場所でなく、整えるところから始めるのもそば部が大切にしたことの一つだそうです。信濃町でも地域課題となっている耕作放置地。人手不足で耕作が間に合わない土地をそば畑とするために一緒にきれいにしていく。地域課題を身近に感じながら、共同体験をすることが人と人とのつながりだけでなく、地域とのつながりを強くしてくれます。

畑チームでは初めて草刈機を触る参加者も。慣れている人が傾斜のある難しい場所を担当し、初心者は平地を担当するなど、声を掛け合いながら進めていきます。一面雑草だらけだった畑があっという間に土が見れるように。

一方、そば部の拠点となる「即心院」のお堂の片付けチームも手際良く作業が進んでいきます。まずは机や座布団、仏具など中の荷物をすべて外へ。必要なものと不要なものを選別していきます。お堂の床拭きも一苦労。何度も雑巾を真っ黒にしながら、みんなで丁寧に磨き上げました。

きれいになったお堂を見て、「これには如来様も喜んでいるね」と思わず笑顔がこぼれる一幕も。掃除をする方も、された場所も清々しくなる場面でした。

一茶とそば

お掃除の後は、一茶記念館の学芸員 渡辺 洋さんをお招きして「一茶と蕎麦」をテーマにした講演会を開催。このミニ講座は畑仕事の後に毎回開催されます。体でも頭でもそばを知ってもらうユニークな構成もそば部の面白いところ。

生涯に30句以上はそばに関する俳句を詠んだと言われている一茶のそば愛あふれるエピソードを通して、この地域にどれほど深くそば文化が根付いているのかを、歴史の側面から深く学ぶ贅沢な時間となりました。

<編集後記>

都会に住んでいると目の前の食べ物が、どこで、どのように、どんな姿で育ってから料理されているのかを体感する機会は限られています。

そば部の面白いところは、食物が育まれる姿を知るだけでなく、その土地の空気感や価値観、人々とも関われるところにあると思いました。育てたとき、つくるとき、食べるとき、そういった節目節目で一緒にいた人達の顔は、これからもそばを食べるときに思い浮かべられるのではないでしょうか。「顔の見える関係性づくり」×「そばづくり」の相乗効果がこれからも楽しみになるようなイベントでした。

<主催者コメント>

自分の大好きな町をこの先もずっと存続させるために。
これは本当に他人事ではないんです。
自分にできることの一つとして、この活動を始めました。

「人と人が出会う」って、都会にいると希薄にやり過ごされることも多いけれど、この町では「奇跡」に繋がる可能性が高いんです。例えば、移住を決断できたり、職場が決まったり、畑を継承したり、住むための家が見つかったり。

「そば好き」をきっかけに、一緒に楽しんでくれるメンバーがいろんなところから集まってくれたら嬉しいですね。

writer | 

8 編集室

Hachi Medida