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「おかげさま」がサプライチェーンを支える   - 株式会社  高台寺和久傳 -

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持続的な成長のために企業が社会的責任を果たすことの重要性が増しています。「ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)経営」への関心の高まりも、その現れの一つと言えるでしょう。ですが、この考え方が提唱される以前から社会的活動と経済的活動、それらを両立してきた企業は少なくありません。名称がつく前から連綿と行われ、老舗のように続いているESG。この連載ではそんな「老舗ノESG」を取り上げ、取り組んできた企業の精神性と未来に向けたアクションをご紹介します。


京都府の北部、京丹後にて明治3年に創業した和久屋傳右ヱ門が起こした旅館から始まり、150年以上の歴史を持つ「和久傳」。

 

日本の伝統の味と格式を守りながら、環境問題や地方創生、ガバナンスの見直しなど、ESG経営を考える上で、避けては通れないことに対しても積極的に取り組む革新性を併せ持っている。料亭事業を運営している株式会社高台寺和久傳の代表取締役桑村祐子氏に、取り組みの背景や人材育成に対するお考えなどについてお話しを伺った。

熱が熱を呼び、連鎖が生まれる

和久傳のルーツである地、京丹後。丹後ちりめんを地場産業として町は栄えていたが、着物の需要が減り、外国産の台頭などにより産業が低迷。京丹後を訪れる商人で賑わい、料理旅館として100年続く老舗旅館であった和久傳は、昭和57年に京都市内にある京都市内の東山の麓、高台寺門前に移転し「高台寺和久傳」として料亭を開くこととなる。

 

移転してからも和久傳は京丹後とのつながりを途切れさせることはない。料亭の味をご家庭に届ける「おもたせ」を販売している「紫野和久傳」の食品工房を立ち上げるとともに、更地であったその土地に植樹を行い「和久傳ノ森」をつくるなど、地域とのつながりを大切にし続けている。

 

「私たちには『京丹後』というルーツに対して、歴史だけでなく、山や川といった情景や、空気までも染み込んでいるという感覚があります。京丹後が栄えていたからこそ和久傳もその地で100年近く続けさせていただくことができた。今でも精神的にも深くつながっている場所だからこそ、自分たちもお役に立てるように利益を循環させたり、再分配ができるようにしたいという思いがあるのです。」

 

と桑村氏は話す。また高台寺和久傳の名物「蟹焼き」に使った間人蟹の蟹殻を、肥料に用いるなど廃棄食材の再活用も行っている。以前から捨てるのはもったいないと感じていたが、調べてみると土壌改良に良い成分があることがわかり、完全無農薬・有機栽培による京丹後での米づくりに用いることになったという経緯があるのだそうだ。

 

「京都の北と南では文化も精神性も違うところが多いです。私たちはその両方を行き来しています。そうすることで、都会にいると気づきにくいことに気がついたり、地域に役立てる新しい視点を得ることができたりすることがあります。両方に身を置いているからこそ、何かを生み出せたることをしたいと思っています。上背水の陣という意識を今でも持ち、一生懸命に取り組んでいるからこそご縁が生まれ、真剣だからこそ力を貸してくださる方がいらして、熱が熱を呼んで、良い連鎖が生まれているのだと思います。」

対立ではなく両立へ

厳格なしきたりが少なくない日本料理の世界だが、和久傳では人材育成にも力を入れている。料理人の教育・独立制度もその一つだ。

 

料理人の「独立」というのは経営側からしてみると避けたいことというイメージが一般的ではないだろうか。それを阻止するのではなく、支援するようになったきっかけは、ある店舗の料理長人事だった。

 

当時、料理場の人事や原価に対して、経営から意見を言うことは難しい環境にあったという。それほど料理人の立場は強く、独立は恐れられているものだった。しかし、人事をめぐって総料理長と意見が対立。辞職を申し出られてしまう。桑村氏は、他の料理人に人事の目的や、経緯を説明して回った。その結果、料理人たちは全員が、和久傳に残ることを選んでくれたという。

 

この出来事をきっかけに桑村氏は、これまで対立軸に捉えられがちであった「独立」と「和久傳の発展」が両立できる仕組みを模索していくこととなる。このようにして、タブー視されてきた独立を支援するための制度や、教育により力をいれていくことになる。

「Have to」 を「 Want to」に

働く環境づくりについて桑村氏が大切にしていること。それは「Have to(しなければならない)」が「Want to(やりたい)」に変わる瞬間が生まれる環境にすること。そこには時代の変化に対する危機感があった。

 

「経営側と従業員の関係性というのは、これまでは距離があることが一般的だったと思います。意思決定を経営者が行い、従業員は従うのみ。しかし、昔のように残業をして働いて自分の家を持つことを目指すという時代ではありません。働くことと人生の目標に関連性がないと、働く意味を見失ってしまいます。

私自身がそうだからというのもありますが、やらされていることというのは力を出しにくい。やらされている集団にならないためには、どうしたらよいのか。人が何によって、自発的に自分の人生を取り戻すのか、ということに興味があります。

 

汗をかいたものにしか手応えは得られないので、指示されたことを遂行することが自分には合っていると思っていたスタッフが、自分で考えて行動する面白さに気づける環境づくりを意識しています。」

ESGの一つである「ガバナンス(Governance)」は統治という言葉から、制度を厳格化するイメージを持つ方もいるのではないだろうか。しかし制度や規則だけでなく、風土・環境といった目に見えないものも持続性や人の循環において忘れてはいけない要素の一つと言えるのではないか。

規模ではなく継続性を追い求める

「しきたりを見直し、方針転換をする。」「新しいことを始める。」

言葉で表現するよりも、実行には困難が付きまとうことではないのだろうか。しかし桑村氏は「決断はしやすい」と断言する。

 

「私たちは、規模は追っていません。規模よりも「続けること」を大切にして、そのためにすべきことを追い求めている。同じことを繰り返していると物事はダメになっていきがちです。変えてないように見えて、変えていることが経営では重要なこと。

 

人事においては違う人を配置したりするなど、人の循環が澱まないようにする。風土も、変化に恐れない風土にするために、挑戦することをよしとし、失敗したら学べばいいと考えるようにする。

 

また止めるから失敗と言われがちですが、どこで止めるのかということはとても大切なことです。限られた資源、資金の中で取り組むことですから、引き際を見極めなければならない。その見極めは経験値が高い方が判断し、責任をとるようにしています。」

 

「やりたくない」「面白くない」とは、言いづらくて言えないものだから、気を遣わないで発言できる場づくりにはかなり意識しているという。自分も年齢を重ねていけば若い人たちと感覚はズレていくのだろうからと、笑いながら話されていたが、その客観性が柔軟性にもつながっているように感じられた。

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