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未来に向けて「本質」を捉え「普遍」を目指す - 株式会社ギンザのサヱグサ  後編 -

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持続的な成長のために企業が社会的責任を果たすことの重要性が増しています。「ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)経営」への関心の高まりも、その現れの一つと言えるでしょう。ですが、この考え方が提唱される以前から社会的活動と経済的活動、それらを両立してきた企業は少なくありません。名称がつく前から連綿と行われ、老舗のように続いているESG。この連載ではそんな「老舗ノESG」を取り上げ、取り組んできた企業の精神性と未来に向けたアクションをご紹介します。


1869年(明治2年)に創業し、2020年まで子ども服専門のスペシャリティストアとして銀座に店を構え、長らく愛されてきた「ギンザのサヱグサ」。

前編では、株式会社ギンザのサヱグサ(以下、サヱグサ)の越境的な取り組みとして、長野県最北端、人口約1,650人の長野県栄村にある「小滝」集落にて行った小滝米のリブランディング、「コタキホワイト」から始まった新規事業を中心に紹介してきた。後編では、地域貢献や、子どもの未来を見つめた取り組み、今後の展望について、前編に続き、代表取締役社長 三枝 亮氏にお話をお伺いした。

銀座の歴史を未来へ

銀座で歴史を刻んできたサヱグサの、地域貢献活動の根幹となるのが「銀座史料室」(私設のため非公開)だ。銀座は、関東大震災と東京大空襲の2度に渡って被災した土地であり、サヱグサもその苦境を街の人々とともに乗り越えてきた。華やかなイメージが強い銀座だが、地域で支え合い、時代の変化を柔軟に受け入れながらも、築き上げてきた伝統や誇りを守り続け、次の世代へと歴史を繋いでできた。

4代目社長の故三枝 進氏(現5代目社長の父)は、銀座の歴史を未来に繋ぎたいという想いから、長い年月をかけて銀座関連の史料を収集していたという。江戸時代の古地図や明治時代の錦絵、大正・昭和初期のモダンなマッチラベル、ポスター、書籍、写真、他にも明治期に建設された銀座煉瓦街の煉瓦や、銀座という地名の由来となった江戸時代の銀貨など、銀座の歴史を物語る貴重な品々が「銀座史料室」に所蔵されている。

これらの史料は今、メディアや地域企業への貸出などを通じ、銀座という街の歴史認識を深め、その未来を考えるために役立てられている。サヱグサの地域貢献への理念は、先人の銀座の街への想いを発端に脈々と受け継がれている。

五感を育み、未来をつくる

サヱグサが「コタキホワイト」を通じて地域貢献している小滝集落は、地元の復興施策の甲斐あって、2015年以降何百人もの人々が訪れるようになった。古民家宿に宿泊しての里山体験や古道ウォーク、春の田植えや秋の稲刈りのシーズンなどには、都会から親子連れをはじめ多くの人たちが訪れる。サヱグサも毎年、「コタキホワイト」の顧客のための稲作ツアーを開催している。刃物を持つことがあまりない子どもたちも、村の人たちの指導を受け、鎌を手にとり器用に稲を刈っていくそうだ。土に触れ、米がどのように育っていくのかを目にし、自らの手で収穫し、やがてそれを口にする。稲作をはじめ、かつては当たり前だった里山の営みを、完成品だけを見ることが多い現代に体験することは、五感を刺激するだけでなく、日本の食文化への理解を深め、未来に繋げていくことの重要性に気づくきっかけとなるだろう。

こうした外部との交流は小滝の地域の再活性化へと繋がった。サヱグサが出会った頃13世帯30名ほどだった集落には、移住者や、集落を出ていた若い世代が戻ってくるようになり、現在では15世帯48人(2024年12月現在)となった。栄村には20人の小学生がいるが、そのうち12人が小滝の子どもだそうだ。

「小滝の米作りを確かなブランドにしていくためには、拡大・拡張よりも拡充・深耕を重視すべきと考えています。この集落に若い世代が戻り、平均年齢が下がったことで、それが可能になり、また、里山の継承という切実な課題の解決にもつながっていくのではと期待しています。」

この、小滝との関わりは「子どものために自然・里山体験を」という想いがきっかけだった。この想いは、2022年にスタートした新規プロジェクト、⼦どもたちの感性と創造⼒を育む体験プログラムを提供する「SAEGUSA &EXPERIENCE」に繋がっている。

Illustrator_Genta Inoue

「本質」を捉え続け、「普遍」を目指す

「SAEGUSA & EXPERIENCE」は、その活動の社会的意義が認められ2024年グッドデザイン賞を受賞した。2024年10月から一般社団法人サヱグサ&エクスペリエンス(代表理事 三枝亮)が事業運営を行い、業界や競合の垣根を超えて、同じ志を持つ人たちとの協働、共創を目指しているという。

「デジタル化が進み、自然や文化とのリアルな接触が減っている現代において、子どもたちが自らの可能性を広げ、感性を豊かにする機会提供の重要性がますます高まっています。そこで、学校教育や一般的な体験教室とは異なる“感性教育”のための“真の体験”の提供を行うSAYEGUSA &EXPERIENCEを立ち上げました。

自然や伝統文化、芸術、科学など様々なジャンルの本物に触れ、多様な個性を持つ大人たちと関わって得る“気づき”というのは、子どもたちの感性と未来に大きな影響を与えます。私たちが、非営利の一般社団法人として活動することを選んだのは、共感者を増やし“感性教育”の重要性を広め、沢山の子どもたちがそれを享受できる社会の創造に貢献するため、この活動を持続可能にするためです。コタキホワイトの時のように、5年、10年後にはより多くの方々と、次世代に感性と創造力を届ける未来を築く、という想いを共有し、日本の“感性教育”発展の一端を担う存在になりたいと思っています。」

未来の担い手である子どもたちの未来のための取り組みを、ビジネスという枠を超えて考え続ける。その枠を超えて、さらに新しい関わりが生まれ深まり、広がっていく。目の前のことと真摯に向き合い、本質を探り、臨機応変に形を変えていく。

利益だけを見るのではなく、未来を見る。それが銀座や、小滝の集落への地域貢献、子どものための体験事業といった活動にも繋がっているのである。

ギンザのサヱグサの「目線」は、子どもたちの未来のために、持続可能な社会づくりへと続いていく。

「コタキホワイト」について https://www.kotakirice.jp

「SAYEGUSA &EXPERIENCE」について https://www.sayegusa-e.org

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