
うっすらと空が明るくなり始めた午前5時半過ぎの野尻湖畔。鳥の囀りでさえまだ聞こえない程の静寂さと、真夏でもひんやりとした空気が身体を包み込む。高原盆地らしさを感じられる朝だ。
なぜ、こんなにも朝早くから野尻湖を訪れたのか。それは長野県信濃町の夏のレジャーとして人気が高い「カヤック」を体験しようとのぶさんが企画したから。
恐る恐るカヤックに乗り込み、いざ出発。辺りはまだ静けさが漂っているが、水面近くを滑空する鳥たちがいる。燕だ!
水面近くに集まる虫をついばむために滑空飛行を繰り返す燕たち。カメラを振り回すかのように撮影するのぶさんが、カヤックを揺らしてくる。のぶさんは撮影を一旦諦め、一同は弁慶島を目指して漕ぐことに。湖は穏やかなようで実は流れがある。「辿り着けるかも?」と思ったのは何だったのか。
なかなか進まないので、進路を変えナウマンゾウ発掘地に向かうことに。雪がまだ残っていた3月の状態が嘘だったかのように、発掘場所は湖の下に沈んでいる。湖のある場所は変わらなくても、その姿形は季節とともに変化している。
徐々に陽が昇り、気づけば湖がキラキラと輝いている。鳥の囀り、船のモーター音など聞こえてくる音も増えてきた。山も湖も森も目覚めてきたようだ。
朝は霧が翳っていた妙高山も、今は綺麗な姿に。妙高山を背景に記念撮影。岸に戻る途中に、水質改善によって増えている水草があると教えてもらった。一つ見つけるとあちらこちらにも生えていることがわかる。見えなかった景色が見えてくる。
湖畔からではなく湖上で教わりながら、自然を感じていると身体に知識が刻まれていく気がする。移住して一年が過ぎ、すっかり身近なものになった景色に新たな見え方が加わるのは楽しいに違いない。
スポーツとしてカヤックを楽しみ、カヤックを楽しみながら、野尻湖を好きになっていく。冬は冬の、夏は夏の、四季折々を通じて多種多様な自然探索ができるのは、かなり贅沢な環境ではないのだろうか。達成感を感じながらのコーヒーブレイク。まだ朝の8時半。今日はいい日になりそうだ。

IIllustration | Karin & Suguri
「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです
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