Hachi Medida

Blueberry days

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長野県信濃町。動物や虫など、その地に棲まう「小さきもの」にまなざしを向けながら、人の暮らしと重ねて句を読んだ小林一茶が生まれた土地でもあります。東京から信濃町に移り住んだ8 Hachi Media編集長のぶさん。この町にすまう命と人のくらしを季節の巡りとともにお伝えします。


長野県信濃町には様々な名産品があるが、ブルーベリーもその一つ。全国で初めて寒冷地での栽培に適している「ハイブッシュ系」の品種を本格的に栽培、産地化したのが信濃町だ。その栽培に成功した老舗農園である「伊藤ブルーベリー農園」に、ブルーベリーを摘むために訪れた。

収穫の最盛期を迎えた伊藤ブルーベリー農園は、多種多様なブルーベリーが実をつけている。その種類は40種類以上あるのだとか。オーナーの伊藤さんと、のぶさんは昨年に取材で訪れてからも交流を続け、2人はすっかり顔馴染みになっている。

「どんぶり食べる時に、そんなおちょぼ口で食べないでしょ。一口でドバッと食べないと!」

伊藤さんが日焼けした顔に満面の笑みを浮かべながら、幾つかの株から採ったブルーベリーを片手いっぱいに渡す。口いっぱいに頬張ると、爽やかな甘味と酸味が、香りと共に口の中で広がってくる。ブルーベリーはハイブッシュ系だけでも数十種類以上ある。それぞれ大きさや味の特徴が異なるため、複数種類を混ぜて食べるのが一番美味しい食べ方だという。のぶさんもこの農園のブルーベリーを口にして初めて違いがわかり、ブルーベリーの印象が変わったそうだ。

「これが、俺の好きな品種。スパルタンっていうの。」

と彼が手に取ったのは、かなり大粒の品種。こんなに大きな品種があったのかと驚かされるが、口に入れると甘さと酸味のバランスが絶妙で確かにファンになってしまう。よく見れば粒の大きさや、僅かに色味も異なるブルーベリー達。伊藤さんは、一つひとつ丁寧に名前を教えてくれる。中にはアメリカで開発されたばかりの品種もあるが、それはこの農園が、今も日本におけるブルーベリー研究の中心地でもあるからだ。研究者達がこの農園を訪れて、研修会が開催されている。

「先生が来てさ、資料を受け取ったら全部英語で書いてあったんだよ。ここはね、ブルーベリーを育てるのに日本で一番いい場所なんだってさ。」

そんなエピソードからも、ブルーベリーへの愛や、この土地で栽培し続けることへの誇りが伝わってくる。

甘さが強いものもあれば、酸味が際立つものもあり、それぞれが複雑に絡み合うからこそ、味に奥行きがうまれる。それは信濃町自体が、多種多様な人や文化を取り込んできた土地だからかもしれない。100年前に国際村を開拓した宣教師が持ち込んだブルーベリーやルバーブ、スイートコーンなどの今では信濃町の名産品となっている野菜や果物。その栽培が信濃町に根付いて今日がある。地域や国、文化を超えて新しいものをつくりあげていく信濃町らしさが、このブルーベリーにもあふれているのかもしれない。

最後に伊藤さんがとびっきりに美味しいブルーベリージャムの食べ方を教えてくれた。こういう情報が手に入るのも、直接会って話すからこそ。ゆっくりとしっかりと、関係を築くことの大切さが、のぶさんを見ていると言葉としてだけでなく、実感としても理解できるようになってくる。

「早速、材料を買いに行こう!今日の夕飯はそれが良いよね。」と、戦利品(摘み終わったブルーベリー)を車に載せて、のぶさんがエンジンをかける。そんな彼女の目が宝物を見つけた子どものようにキラキラして見えたのは、きっと夏だったからだろう。

IIllustration | Karin & Suguri

「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです

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