
灼熱の東京から抜け出して、涼を求めて訪れたはずの信濃町は暑かった。コンクリートばかりの東京と違い、土があるので暑さの感じ方が違うとはいえ「避暑」という言葉は、いつかなくなってしまうのではないだろうか。そんなことを思い浮かべながら、のぶさんと犬の散歩を兼ねて野尻湖岬にある「癒しの森®️象の小径」を歩く。
木漏れ日が差し込む緑の回廊は、心を穏やかにさせてくれる。木陰のおかげで少し涼しいのもあり、リラックスしながら歩き続けた。
しばらくすると、鐘が設置されていた。途中で飽きないようにするための、アトラクションのようなものなのか。唐突に現れた人工物に戸惑っていると、急にその鐘を鳴らし始めた。
「熊よけにね。」
その言葉にハッとさせられる。そう、ここは森の中。人間だけがこの森にいるわけではないのだ。熊や猪、狐だっているだろう。その鐘は人を楽しませるためにあるのではなく、動物と人間がお互いに適切な距離を保つために存在する。まるで共生のシンボルのように。
木が更に生い茂り、薄暗くなってきた道を進むと、奥の方に日向が見えてきた。光をめがけて勢いよく駆けていく犬を追うと、そこは野尻湖を間近で眺められる絶景スポットだった。湖畔で楽しそうにはしゃぐ愛犬の姿をカメラに収めるのぶさん。周りの木々が、額縁のように彼らを取り囲み、その景色は一枚の絵画のようだ。
森の住民もこの額に収まることがあるのかもしれない。何枚もの景色がここで切り取られていくのだろう、夏の思い出と共に。

Illustration | Shinobu Mitsuoka
「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです
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