
「疲れたな」と感じた時、心を落ち着かせてくれる方法は何ですか?たくさんの情報が溢れ、目まぐるしい変化が起きている今の社会。どうしたら心を楽にできるのか。この連載では心理学者・臨床心理士の黒川由紀子さんに「マインドフルネス」を軸に、心を豊かにするためのヒントをご紹介いただきます。
マインドフルネスでは、今、この瞬間に評価も判断もせずにやさしく注意を向けることを目指します。そのために練習を積み重ねます。ピアノや運転のように繰り返し練習し続けることで、できるようになります。「今、この瞬間にやさしく注意を向けること。」言うのは簡単ですが、実行するのは難しいものです。どのようにすればマインドフルネスを養うことができるでしょうか。
その一つに「何かを育てること」があるのではないでしょうか。皆様は、今、育てているものがありますか?野菜、果物、草花、めだか、子猫? 子どもを育てている方もいらっしゃるかもしれません。何かを育てるためには、光、土、空気、畑、水槽、籠、家等、外的環境を整えなければなりません。水や栄養など、内側に注ぎ込むものもいるでしょう。侵襲してくるものから身を守るためのものも必要でしょう。
何かを育てるためには多くの要素が必要ですが、一番大切なものの一つは、時間です。時間をかけてじっと待つ。焦らず怒らずゆったり静かに待つ。芽が出てふくらみ、花が咲いてやがてしぼみ、実がなるまでには一定の時間が必要で、そのプロセスを早回しすることはできません。赤ちゃんがオギャアと生まれて、目が開き、からだが育ち、はいはいするようになり、立って歩いて言葉を話すまでにも時間がかかります。少しずつ成長してやがて大人になる。そのためには約20年必要です。この間、さまざまな関わりや働きかけを行いますが、それと同時にじっと待つ力が求められます。
待つ力を養うことは、心を育てることにつながります。何かを育てることを通じて、マインドフルな心を育ててみませんか。「育てる門には福来たる」でしょう。
マインドフルになるおすすめスポット
長野県御代田町の真楽寺。龍神伝説が伝わる池の水は透明度が高く、あたりはいつも静か。いつまでもたたずんでいたくなる場所です。風を感じながら耳を澄ませば自然に呼吸が深くなるでしょう。

Illustration | Zelenak Sandor
次回の記事
前回の記事
writer |
黒川 由紀子

心理学者、臨床心理士。上智大学名誉教授、黒川由紀子老年学研究所所長。特に高齢者の心理臨床を専門とする。これまで医療機関や福祉施設等で認知症の人への心理療法を専門職やボランティアと共に行ってきた。現在回想法グループ、自分史年表講座、マインドフルネスの会、歌・音楽を楽しむ会等を運営している。年を重ねる豊かさを多世代で共有できたらよいと考えている。
ー シリーズ別に探す ー