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100年企業に向けて。カーボンクレジットが導く先。 - 株式会社 八芳園 後編 -

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持続的な成長のために企業が社会的責任を果たすことの重要性が増しています。「ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)経営」への関心の高まりも、その現れの一つと言えるでしょう。ですが、この考え方が提唱される以前から社会的活動と経済的活動、それらを両立してきた企業は少なくありません。名称がつく前から連綿と行われ、老舗のように続いているESG。この連載ではそんな「老舗ノESG」を取り上げ、取り組んできた企業の精神性と未来に向けたアクションをご紹介します。


前編では、株式会社八芳園がこれまで行ってきた取り組みを中心に、その背景となった考え方や、現在おきている変化について紹介してきた。後編では、新たな取り組みである「カーボンクレジット」や、今後の展望について引き続き、薮嵜 正道 氏と工野 優理 氏にお話を伺った。


強みを守り、攻めに転じる

八芳園では、積極的に他業種や他業界と連携を図っている。コロナ禍に置いて、「コラボ」という言葉が多用され、気軽に異業種連携が行われるようになったことも起因しているが、プロダクトを持たないからこそ、連携しやすいという特徴があると工野氏は話す。「連携しやすい時代になったことを八芳園としては活用していきたいんです。コラボする中で、良い刺激をもらい、勉強させてもらえたら会社にとっても、社会にとっても価値のあることが生まれるのではないかと考えています。」

薮嵜氏も次の様に話す。「私たちの場合、経済性ではなく、親和性で連携を図ることが多い。経済性を重視して連携する場合、業種が近い企業が相手となりがちです。ところが、親和性の場合は全く違う業界・業種と組むんです。プロダクトが違っていても、想いや考え方、方向性が同じことで、良い連携が生まれ、新たな価値につながる。SDGsへの取り組みや、ESG経営を目指すことが、こういった良い連携が生まれるきっかけとなり、良い社会づくりにつながっていると感じています。」

新しいことに挑戦し続ける背景には、ブライダル業界に対する危機感もある。少子化によって結婚式の数は減少傾向が続いている。それだけでなく最近では「結婚式を挙げたくない。」と考える人も増えているという。その要因を薮嵜氏は、結婚式をしたい人が来るのを待っているだけになってしまっていたのではないか、結婚式の価値や素晴らしさを伝える努力がより必要だったのではないかと考察する。既存の価値を守るだけで、挑戦しなくなってしまったら、業界そのものが無くなってしまうかもしれない。

だからこそ業界の枠を超えて、社会的意義のある取り組みを続けること。すなわち世の中をもっと良くしようという「攻め」の気持ちが、新たな価値を生み出し、企業の持続性につながると考えているのである。

「地域貢献」が生み出した新規事業

八芳園では、「カーボンクレジット(Carbon Credit)」という新たな取り組みが始まろうとしている。

「カーボンクレジット」とは、植林や省エネ機器の導入などによって生まれた温室効果ガスの削減・吸収量をクレジット(排出権)として発行し、取引できるようにした仕組みのことだ。CO2排出削減への取り組みは企業の社会的責任となる中で、カーボンクレジットの購入は、どうしても削減できないCO2排出量を相殺して埋め合わせること(カーボンオフセット)になり、企業が環境を守りながら持続可能な経営活動を実施するための一つの手段として注目されている。

八芳園の創業者である長谷 敏司氏の出身地、鳥取県鳥取市佐治町。そこにある340haの森林がその対象となる。2年前、この土地の活用を検討する中で、カーボンクレジットの推進者と出会い、事業化を相談したことがきっかけとなった。

土地自体は、60年以上前に購入されたものだった。40年ほど前までは、木材は一本で数十万円になるような時代だったこともあり所有していたそうだ。だが、海外からの輸入により、材木の価値が暴落したことで重要視されなくなっていたという。しかし、事業としての価値が下がってからも山の手入れだけは続けていた。このことが大きく役立つこととなる。

カーボンクレジットとして認められる条件が、数十年に渡って管理された森林であることだったのだ。間伐や、枝打ちといった管理には、およそ数億円を費やしている。しかし止めることがなかったからこそ、認証を取得することができた。「地元に貢献する」という定量的には測れない付加価値を大切にする文化があったからこそ実現できた新規事業なのである。


「カーボンクレジット」が導く新たな可能性への探究

認証を得たのは2024年1月、クレジットの取得は2025年3月となるため、具体的な活用方法は現在模索中だという。事業担当である工野氏は、利益を得るためというよりも、カーボンニュートラル結婚式といった新しい形を新郎新婦と考えたり、これまで関わったことのない業種の企業との出会いや、自治体との連携につながるきっかけにしたいと話す。

また、カーボンクレジットはサービスという無形の資産を活用してきた八芳園にとって、初めて有形で提供するものとなる。事業ポートフォリオの転換を推進している中で、このことは大きな意味合いを持つという。実際に外部からの注目度も高く、今まで想定しなかった人や企業との出会いが既に生まれているそうだ。そこに無限の可能性があり、それだけで価値があると薮嵜氏も語る。

カーボンクレジットだけでなく、地域創生といった社会性のあることに取り組み続けることは、人を惹きつけていくことにつながっている。サービスを提供するだけでなく、社会的意義を果たすこと、それはブランド価値を高めることにも貢献していると言えるだろう。

100年企業に向けて

最後にお二人に、今後の展望について伺った。

薮嵜氏

「八芳園は100年企業を目指しています。100年まではあと19年。しかし先行きが見通せているわけではありません。実現するためには、ブランドづくり、ファンづくりが必要です。そこにはサスティナビリティといった社会性のある取り組みが不可欠だと考えています。今まで続けていたことも含めて、長期的な視点でブランドをつくっていこうと思います。

また、私はホテル業界出身なのですが、個人的にはサービス業の社会的地位を上げたいという想いがあります。サービス業は無形の価値を提供していますが、ブライダルもレストランも人の人生を左右する仕事だと考えているからです。そのためには、社会とのつながりを可視化し、働いている人自身が、社会的貢献ができていると感じられるようにする必要があります。異業種との連携も、その手段の一つだと思っています。これからも、企業理念である『日本のお客様には、心のふるさとを。海外のお客様には、日本の文化を。』を大切にして、今の取り組みを愚直に続けていきたいですね。」

工野氏

私も次のステージは100年企業になることだと捉えています。創業者、長谷 敏司氏の出身地である鳥取県では、県内の学生向けに30年間、奨学金支援を続けてきました。これまでに支援した人数は550人。10億円以上を無償貸与していたのです。私自身はこの取り組みについて、数年前に知りました。社会貢献は、意外と昔から取り組んでいることも多かった。この経験から、まずは一番近い存在である社員に向けて、その事実を知ってもらうようにする。そして世の中にも伝えていく必要があると考えています。

カーボンクレジットに取り組んできて、細くても永く続けられることが大切だと実感しました。一度きりで終わってしまうのではなく、新しく貢献できる分野を見つけて携わる人が変わっても、その取り組みを続けていく企業文化をつくっていきたいと思っています。


一つひとつの「出会い」を大切にし、その積み重ねが新たな価値を生み出した。続けることが、続くことにつながっていく。

前編はこちら▼

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