Hachi Medida

唄い踊りて盆の夜

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長野県信濃町。動物や虫など、その地に棲まう「小さきもの」にまなざしを向けながら、人の暮らしと重ねて句を読んだ小林一茶が生まれた土地でもあります。東京から信濃町に移り住んだ8 Hachi Media編集長のぶさん。この町にすまう命と人のくらしを季節の巡りとともにお伝えします。


「寝所から ならして出たり 踊下駄」

という小林一茶の俳句がある。祭の笛の音に魅かれていてもたってもいられず寝所にいるときから下駄で拍子を鳴らしながら外に出たときのことを詠んでいるそうだ。

今夜は一茶の生家のある柏原地区の盆踊り大会が開かれる。信濃町では各集落によって、振付や歌詞の異なる盆踊唄があり、柏原では「柏原おけさ」と「柏原甚句(かしわばらじんく)」が踊り継がれてきた。その伝統を守ろうと有志で保存会がつくられるほど地元の人たちにとって大切な文化の一つでもある。

のぶさんもその保存会の一員になっている。「柏原おけさ保存会」の文字が白字で書かれているピーコックブルーの鮮やかな浴衣を身に纏った人たち。踊り櫓や提灯の赤い色合いとのコントラストで一際目を引く存在だ。

「この動きは稲を刈る。そして米俵を担ぐっていう意味なの。」

見慣れない動作に戸惑っていると、のぶさんが一つ一つ丁寧に教えてくれた。「おけさは分かりやすいけど、甚句が難しくって」と本人は言うが、どちらの踊りもこなれているようにしか見えない。

不思議なもので意味を教わると、すっと体に入ってくる。町の子どもたちも、町の人も、町の外から来たような人たちも、青い浴衣に誘われるように輪に入っていく。お手本を見よう見まねで真似ながら1周目は追いかけるのが精一杯で、2周、3周としているうちに笑顔になってゆく。踊りと共に笑顔の輪も広がってゆく。

気づけば盆踊りは終わっていた。「ちょっと疲れたね!」と笑いながら話す保存会の人たち。心地良い達成感のようなものが彼らから伝わってきた。もちろん、のぶさんからも。

祭りのあとは少し寂しい。それは楽しかった証拠なのだろう。一茶はお盆前からうずうずしながら拍子をとっていたのかもしれない。待ちに待った盆踊りを満面の笑みで踊っていたのではないだろうか。お盆なのだから、そんな空想をしてもいいじゃないか。

「のぶさん達みたいに、今夜をきっかけに保存会を知って、いつか入ってくれるといいな。」と皆で期待を口にする。加入は大歓迎だそうだ。来年も、再来年も、踊りの輪が広がるように、人との縁もこうして守られ続けられていくのだろう。

IIllustration |  Yuika
「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです

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