
その日、のぶさんは信濃町古海地区へご機嫌に車を走らせていた。目的地は「ふるみの里 清水屋」。知り合いのお店で偶然出会い、「藍」の話で盛り上がったのをきっかけに、工房を見せていただくことになったのだ。「ふるみの里 清水屋」では10年ほど前に土蔵から「伊勢型紙」という100年以上前に染めに使っていたであろう型紙が見つかった。それをきっかけに自分たちで藍を育てるところから藍染めを始めたそうだ。
もともとのぶさんは藍が好きらしい。家にはこれまでコレクションした藍染のテキスタイルがいくつもある。日本のものだけでなく、アフリカで買ったものも。着る機会を考えずに着物も衝動買いしたというのだから、どれだけ好きなのかが伝わってくる。
それほど好きな藍を苗から育て、発酵、染色をしている人たちがいるという衝撃的な事実に、実際にその目で見てみなければ、と行動に移すのはあっという間だった。
作業場では、木枠の中に筵(むしろ)で覆われた小山ができていた。捲り上げると、1メートルほどの高さに積み上がった藍葉が顔を覗かせる。発酵が進んでいるからか、熱気とともに香りが漂ってくる。水をかけ、よく混ぜ合わせ、また積み上げる。これを12月くらいまで20回程度繰り返すことで染料となる「蒅(すくも)」が完成するという。
実際に触ってみて、熱を帯びていることに驚く。藍を育て、つくる喜びや楽しさをシェアするかのように、どんどん説明を清水屋の方々がしてくれる。つくり手の熱量の高さが、場のテンションをさらに高めていく。
折角だからと、昨年できた蒅が使われている藍甕(あいがめ)も見せていただいた。奥深い緑がかっているような青みがかっているような不思議な色合いの液体が入っている。そこに布を浸して取り出してみると見慣れた「藍」色が顔を出した。すすいで、さらに浸してというのを繰り返すらしい。藍甕の表面がすぐに酸化してしまう様子から、藍というのは繊細な生き物なのだということを感じずにはいられない。
「なんだかシンクロしているみたい。」
とのぶさんは呟いた。歴史ある古海で、藍染めに用いていたものが再発見されたことで、一から藍を植えて育てて、また藍染めが始まる。それが藍を建てる過程ともシンクロしているようで、本当に藍と縁がある土地なんだろうね、と。
時を超えて繋がった縁。その繋がりを知れば知るほど、土地と人との物語に深みが増していく。それはまるで幾重にも藍が摺重なった藍摺絵のように。

Illustration | Shinobu Mitsuoka
「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです
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