
「サーキュラーエコノミー(循環経済)」は単なる環境規制ではなく、経済の仕組みそのものを変える政策として各国で推進されている。その中で、日本はどうなっているのだろうか。投資家などのように経済の動向や変化を注視する人々からは、どのように見えているのだろうか。
「Talk Circular × Economy」では、注目が高まっているトピックを中心に、グローバル企業への投資に10年以上関わり、ヨーロッパと日本を行き来してきたアシル・アンドレ=ホッティンガー氏の投資家として、また外国人としてのバックグラウンドを活かしたユニークな視点で見解を述べていく。その「捉え方」を楽しみながら「循環×経済」を探訪しよう。
前回まで日本における水事業について述べてきたが、今回は日本経済の中核を担うと同時に、世界的な循環型経済の推進にも大きな影響を与える産業、自動車業界に目を向けたい。
まずは自動車単体ではなく、移動(モビリティ)全体のあり方を見直すことが重要である。なぜなら、移動の手段や選択が循環性に直結するからだ。公共交通は一般的に、個人による自家用車の使用に比べてCO₂排出量が少ない。この点において、日本は多くの欧州諸国とは一線を画している。特に鉄道を中心とした公共交通の信頼性と効率性は世界有数であり、世界で最も利用者数の多い鉄道駅トップ10のうち9つが日本にあることからも、それがうかがえる。
このようなインフラのおかげで、日本では公共交通の利用率が高く、交通部門の温室効果ガス排出量も相対的に抑えられている。日本の一人当たりの自動車保有台数は米国とほぼ同水準だが、東京では全国平均の半分にとどまっており、先進国の中でも最も自動車使用率の低い都市とされている。
自動車産業における循環性を考える際の大きなテーマのひとつが「脱炭素化」である。過去20年の間に、自動車の動力源は内燃機関(ICE)に依存していた状態から、さまざまな技術へと多様化してきた。ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)といった技術はすでに一定の普及を果たしており、さらに水素や燃料電池車など、導入初期段階にある技術も存在する。
なかでも、これまで最も脱炭素化に貢献してきたとされるのはハイブリッド車である。道路上での長年の利用と、広範な普及がその背景にある。最近ではバッテリー式電気自動車(BEV)の販売急増も大きな要素となってきているが、HEVが果たしてきた役割はいまだに大きい。
HEVといえば、トヨタのプリウスを筆頭に同社のイメージが強い。実際、トヨタによれば、1997年に初代プリウスを発売して以来、これまでに累計2,700万台以上の電動車を販売しており、それによって累計1億7,600万トン以上のCO₂排出を抑制したとされている。ハイブリッド車は「過渡期の技術」として語られることもあるが、自動車業界の製品サイクルが長いことを踏まえると、この「過渡期」は数十年に及ぶ可能性もある。既存のインフラに即座に適応できる柔軟性もあり、実用性の面では今なお非常に有効な選択肢である。
HEVの普及を牽引してきたのがトヨタだとすれば、BEV(バッテリー式電気自動車)分野でその先駆者とされるのがテスラである。しかし、ここ数年で最大の変化は、中国のBEV市場への本格参入だと言えるだろう。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国は現在、世界の電気自動車生産の70%以上を占める製造拠点となっている。一時は数百社にのぼるBEVメーカーが乱立していたが、激しい競争と利益率の低さにより、現在では約100社に集約されている。2024年時点で、中国国内にはすでに3,100万台以上の新エネルギー車(NEV)が走っており、その年だけで約1,300万台が生産・販売された。これは中国市場の新車販売全体の40%以上を占める割合である。
EVのコスト競争力という観点で大きな転換点となるのが、バッテリー価格が1kWhあたり80米ドルに近づいた時である。この水準に達すれば、補助金なしでもガソリン車と価格面での競争が可能になると見込まれている。ただし、EVが本当に脱炭素化に貢献するかどうかは、その充電に使われる電力の発電方法に大きく依存する。火力発電よりも発電所の方が一般的には効率的であるものの、EVが真の循環性を発揮するためには、再生可能エネルギーや循環型の電力によって走ることが前提となる。
Part1では、自動車業界における脱炭素化の動向を中心に見てきた。Part2では、「循環性」が単にCO₂の削減にとどまらず、車両のライフサイクル全体にどのように関わるのかに焦点を当てる。
具体的には、バッテリーのリサイクル、車両の全寿命管理、新たな生産・ビジネスモデルといった、モビリティの未来を形づくるイノベーションについて取り上げていく予定である。
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writer |
Mr. Andre-Hottinguer

アシル・アンドレイ-ホッティンガー は、過去10年間にわたり大規模な機関投資家向けに公共株式ポートフォリオを管理してきたグローバルエクイティ投資家です。2013年から2020年まで、彼は欧州最大の資産運用会社であるアムンディでシニアポートフォリオマネージャーとして勤務し、高い信念に基づくグローバルエクイティプロセスを開発しました。2018年には東京に移住し、グローバルおよびアジアの株式チームのために、日本およびアジア企業に焦点を当てました。
アシルは、パリのHECでファイナンスを専攻し、経営学の修士号を取得しました。2022年には、フランスにおける40歳未満の才能と将来の経済リーダーを集めた「ショワゾル100」ランキングに選出されました。
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