Hachi Medida

畑打つ人々

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長野県信濃町。動物や虫など、その地に棲まう「小さきもの」にまなざしを向けながら、人の暮らしと重ねて句を読んだ小林一茶が生まれた土地でもあります。東京から信濃町に移り住んだ8 Hachi Media編集長のぶさん。この町にすまう命と人のくらしを季節の巡りとともにお伝えします。


あんなにもたくさんあった雪はほぼ跡形もなくなっている。雪がなくなり暖かい日が続くようになると信濃町では各々が家の庭先で家庭菜園を作り始めるようになる。

のぶさんも今年は家庭菜園を始めることにしたそうだ。先日、大家さんにお願いして、耕運機で庭の土を掘り起こしてもらったばかりだ。耕したばかりだとわかる庭先は、1ヶ月程前までは4〜5メートル程の雪が積もっていた場所とは思えない。季節によってこんなにも景色が変わるのかと驚かされる。

「のぶさん、いる?」と朝からお隣さんが訪ねてきてくれた。

「ここの肥料、キノコの菌床を使っているんだけど安いし、物もいいよ。自分で袋に詰めないといけないんだけどね。」

とお得な情報を教えてくれた。軒先というリアルな場所で、生活に直結した情報を分かち合えるのも、人と人との繋がりが緩やかにつながる関係性があるからこそ。のぶさんが移住した理由の一つに、人間らしさのある生活がしたいと思ったと言っていたが、まさにこういうやりとりのことを指すのだろう。

残念なことに、その日は肥料屋さんは定休日だった。掘り起こした土に栄養を届けないと、種まきはできない。土づくりのために必要なものを買いにホームセンターに立ち寄ると人で溢れていた。皆それぞれに工具や農具・肥料などを探しているようだ。すると偶然、職場の同僚に出会った。

「土を起こす農具を探していて。」
「三又に分かれているやつのことですか?」

そんな会話をして、農具コーナーへ。教えてもらった農具があった。本日2度目の有益情報だ。ありがたい。

石灰も買って、早速畑に蒔いて土づくりがスタート。1年前、鍬を持っていることを誰が想像できただろうか。人生は先が見えないからこそ面白い。一心不乱に三又鍬を振るう。ただ一つのことに集中しながら作業をしていると思考がすっきりしてくる。ちょっとしたマインドフルネスになるのかもしれない。

土づくりの次は畝づくりが待っている。さらに春になっても霜が降りる日がある寒冷地の信濃町では、強い苗を育てなければならない。ビニールハウスの中で手塩にかけて育苗しながらの土づくりだ。この時期の信濃町の人々はやることが多くて忙しい。けれども野良仕事が楽しいのは春を迎えた喜びもあるからだろう。これから芽吹きの季節が始まる。ますます軒先の情報交換が欠かせないことになりそうだ。

Illustration | Shinobu Mitsuoka
「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです

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