
長野といえば「信州そば」を思い浮かべる人も少ない。信濃町にも蕎麦屋は多くあり、皆それぞれにお気に入りのお店があるほど。自分で蕎麦を打つ方も多い。のぶさんも、打ちたての蕎麦の味に感動して以来、ハマって練習している。
その師匠となった方は、一茶忌を取り仕切っていた一茶保存会のメンバーだ。今夜はあるイベントの予行演習を兼ねて蕎麦打ちをするというので、参加することになった。会場である地域交流施設には、それ専用の道具がいくつもあり、さすが信濃町と関心してしまう。
経験者も未経験者も交えて、あーでもない、こーでもないとお互いのやり方を見ながら師匠の指導の元で和気藹々と進んでいく。のぶさんは経験者なだけに、慣れた手つきで菊練りをして、きれいな玉をつくっている。その手際の良さに、二巡目では師匠から未経験者のサポート役を任命されていた。
打った蕎麦をメインに、それぞれが家から持ち寄ったお惣菜もテーブルに並んでいく。ルバーブの砂糖煮や、蕎麦の葉のお浸しなど、東京では見慣れない家庭料理が、この土地の食文化の豊かさを教えてくれる。みんなで打った蕎麦を酒の肴に呑む、なんとも贅沢なひと時だろう。
あっという間に楽しい時間が過ぎ、撤収に取り掛かる。役割を取り決めた訳ではないのに、驚くほどテキパキと片付けが進む。「こっちの人は本当に片付けが早いの。」とのぶさんが言っていたが、こういうことだったのか。意外なところでも地域性が現れているようで興味深い。
住み慣れた土地を離れると「違う」ということに戸惑うこともある。でものぶさんは、そういうこととは無縁のように見える。側から見ていると、昔からそうだったかのように馴染んでいるくらいだ。そう感じるのは、彼女が気負わず(そうではないときもあっただろうが)、集まりがあれば参加して、語り合い、ゆっくりと自分を知ってもらうようにしていたからだと思う。
それが「合っていた」ということなのかもしれない。気づけば移住して1年が経とうとしていた。

Illustration | Shinobu Mitsuoka
「すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです
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