
「サーキュラーエコノミー(循環経済)」は単なる環境規制ではなく、経済の仕組みそのものを変える政策として各国で推進されている。その中で、日本はどうなっているのだろうか。投資家などのように経済の動向や変化を注視する人々からは、どのように見えているのだろうか。
「Talk Circular × Economy」では、注目が高まっているトピックを中心に、グローバル企業への投資に10年以上関わり、ヨーロッパと日本を行き来してきたアシル・アンドレ=ホッティンガー氏の投資家として、また外国人としてのバックグラウンドを活かしたユニークな視点で見解を述べていく。その「捉え方」を楽しみながら「循環×経済」を探訪しよう。
前回に引き続き、家族経営企業が循環の概念にどのようにアプローチしているのか、をテーマに探求していく。Part 1では日本のファミリービジネスがどのように循環型経済(サーキュラリティ)を事業に取り入れ、世代を超えて持続可能な成長を実現しているかを紹介してきた。
Part2ではファミリービジネスが「家」の価値観や長期的視点に基づいて経営・資源活用・人材育成にどのような影響を及ぼしてきたのか、ということについて述べていく。
ファミリービジネスにとって循環性が欠かせないもう一つの理由は、「家(いえ)」という概念に根ざしている。この「家」という考え方は、結婚や養子縁組によって加わる家族だけでなく、祖先や将来世代までも家族として含むものである。過去・現在・未来すべての家族をひとつの連続したシステムの一部として捉えることが、長期的な持続可能性と事業継続の意識を強化する。
家族の遺産や価値観は、企業の運営や成功と深く結びついており、それゆえに評判の維持は非常に重要な課題となる。長期的視点で経営を行う企業にとって、ステークホルダーの間で強い評判を保つことは不可欠だが、企業名に家名が含まれている場合には、その重要性はさらに増す。
ファミリービジネスでは、従業員を企業の長期的な成功に欠かせない存在と捉え、育成や成長への支援に重きを置くことが多い。この姿勢は、現代において「人的資本(Human Capital)」と呼ばれる考え方と一致しており、従業員のスキル、知識、そして忠誠心が企業にとって重要な資産であると見なされている。
こうした企業では、創業家以外の従業員にも複数世代が働いていることが珍しくなく、しばしば家族ぐるみで企業の成長に貢献している。従業員の家族の歴史と創業家の歴史が交差しながら、ともに歩んできた物語が紡がれていく。そして時を重ねるごとに、それぞれの家族の物語が企業の歴史と一体となり、企業と従業員との間に深いつながりが育まれていく。
バランスの取れた成長と、慎重なリスクテイクもまた、ファミリービジネスにとって基本的な価値観である。各世代は、自分たちが受け継いだ時よりも良い状態で次世代へ企業を引き継ぐことを目指している。これを実現するため、ファミリービジネスの拡大は他のビジネスモデルと比べてより慎重であり、急成長よりも持続可能性に重きを置く傾向がある。
こうした着実なアプローチは、外部資本への依存を避け、企業の独立性と家族による経営権を保ちつつ、長期的な安定を実現することにつながっている。その結果、日本のファミリービジネスの平均寿命は、米国やヨーロッパの同様の企業と比べて約2倍に達している。
これほどまでに長くビジネスが続いている理由は、単に経営戦略によるものではなく、資源の効率的な活用にも支えられている。長期的な視点を持つ企業は、資源の最適利用、廃棄物の最小化、副産物の再利用といった取り組みを積極的に行っている。
その好例として、日本の老舗酒造である月桂冠から聞いた取り組みがある。酒造りの過程で生まれる副産物を再利用することで、品質や伝統を守りながら廃棄物ゼロを実現している。酒造りでは、廃棄物をできる限り減らすことに重きが置かれている。たとえば、精米時に出る米ぬかの細かい粉は丁寧に回収され、せんべい製造業者によって再利用されている。
また、酒粕(さけかす)—つまり搾りかす—は食品分野で幅広く活用されている。代表的な使い道としては、魚や鶏肉、各種野菜などを漬け込む伝統的な製法である粕漬け、あるいは酒粕と冬野菜を用いた味噌仕立ての汁物である粕汁が挙げられる。さらに、米粉や酒粕は家畜飼料としても使用されており、無駄なく再利用されている。
同様に、醤油業界でも副産物の活用例がある。たとえば、醤油粕(しょうゆかす)は、もろみと呼ばれる発酵熟成させた原料から生醤油を搾った後に残る固形物である。この醤油粕は肥料として使われるだけでなく、特に牛、鶏、豚の飼料としても価値が高い。タンパク質やミネラル、ビタミンが豊富に含まれており、その栄養価の高さから、持続可能な飼料の代替として利用され、廃棄物を減らしながら農業サイクルを支えている。
さらに、豆乳製造の過程でも同様の副産物が生じる。大豆を煮てすり潰し、豆乳を絞り出す際に残るのが「おから」である。おからはしばしば廃棄されがちだが、食物繊維やたんぱく質など、栄養価が非常に高い。乾燥させることで、焼き菓子や植物性の代替肉製品、あるいは日本の伝統料理など、さまざまな食品に活用できる素材である。
今後の連載では、日本におけるプラスチック、建設、食品生産といった特定の産業分野が、循環性にどのように取り組んでいるかを取り上げていく予定である。
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writer |
Mr. Andre-Hottinguer

アシル・アンドレイ-ホッティンガー は、過去10年間にわたり大規模な機関投資家向けに公共株式ポートフォリオを管理してきたグローバルエクイティ投資家です。2013年から2020年まで、彼は欧州最大の資産運用会社であるアムンディでシニアポートフォリオマネージャーとして勤務し、高い信念に基づくグローバルエクイティプロセスを開発しました。2018年には東京に移住し、グローバルおよびアジアの株式チームのために、日本およびアジア企業に焦点を当てました。
アシルは、パリのHECでファイナンスを専攻し、経営学の修士号を取得しました。2022年には、フランスにおける40歳未満の才能と将来の経済リーダーを集めた「ショワゾル100」ランキングに選出されました。
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