
「サーキュラーエコノミー(循環経済)」は単なる環境規制ではなく、経済の仕組みそのものを変える政策として各国で推進されている。その中で、日本はどうなっているのだろうか。投資家などのように経済の動向や変化を注視する人々からは、どのように見えているのだろうか。
「Talk Circular × Economy」では、注目が高まっているトピックを中心に、グローバル企業への投資に10年以上関わり、ヨーロッパと日本を行き来してきたアシル・アンドレ=ホッティンガー氏の投資家として、また外国人としてのバックグラウンドを活かしたユニークな視点で見解を述べていく。その「捉え方」を楽しみながら「循環×経済」を探訪しよう。
建設業界とエネルギー業界を取り上げたこれまでの内容に続き、今回は「水」に注目したい。水はもともと自然の中で循環する仕組みを持っており、蒸発や降水といったプロセスを通じて浄化されながら、形を変えて地球上をめぐっている。
しかし過去100年の間に、都市化、人口増加、その他の人間活動がこの自然の循環に大きな影響を与えてきた。その結果、水資源の不足や、水に関連する極端な気象現象がますます深刻化している。
一見すると水は豊富にあるように感じられるが、地球上に存在する水のうち淡水はわずか2.5%しかない。したがって、水資源の効率的な管理は極めて重要である。さらに課題を深刻にしているのが水質の低下である。2021年の国連報告書によれば、世界全体で発生する排水の80%以上が未処理のまま環境中に放出されており、一部の開発途上国ではこの割合が95%を超えている。ここでは、水分野が直面している主な課題と、それに対する可能な解決策について見ていく。
あまり注目されないが、重大な問題のひとつが「漏水」である。世界中の水道事業者は、配水ネットワーク内で多くの水を失っており、地域によっては供給量全体の25〜50%が漏れている。一部の新興国市場では、その割合が75%にも達するとされている(国際水協会の調査)。
問題の核心は、漏水の多くが地中で発生し、発見が難しく、対応にも高いコストがかかる点にある。こうした中で、日本はこの分野で顕著な進展を遂げた好例といえる。70年前、たとえば東京では漏水率が80%に達していたが、現在ではそれが2%まで低下しており、これは世界でも最低水準にある。
この大幅な改善は、鉛管からステンレス管への切り替えを含む系統的な配管更新、予防保全、迅速な漏水検知とその日のうちの修復、さらには夜間流量の監視による隠れた漏水の発見など、さまざまな対策の積み重ねによって実現されたものである。日本政府は、今後の水道事業の目標として、大規模事業者で98%、中小規模の事業者でも95%の有効水量率の達成を掲げている。
もうひとつ、見過ごされがちな重要課題が農業による水の大量消費である。農業は食料生産に不可欠な分野だが、水の使用量という観点では、アジアのコメ生産国では全体の50%以上、南欧の一部地域ではさらに高い割合を占めている。日本でも、農業は圧倒的な水の使用者であり、国内の水使用量の約3分の2を占めている。その大半は水田の灌漑に使われており、農業用水の90%以上が水田に向けられている。
日本の農家は、古くから雨水や地下水を最大限に活用する技術を磨いてきた。弥生時代に導入された水田と灌漑システムは、現在に至るまで農業の基盤となっている。灌漑水の分配と再利用を効率化するため、日本では全国で約4万kmにも及ぶ水路ネットワークが整備されてきた。これは、国内の河川総延長の約4倍にあたる。このネットワークは、必要な場所に水を届けるだけでなく、上流の田んぼで使われた水を下流でも再利用することを可能にしている。
現在では、こうした伝統的なシステムにセンサーや自動制御などの最新技術が加わり、水の分配をより最適化し、損失を最小限に抑える工夫がなされている。また、最近では点滴灌漑といった技術も導入されており、植物の根元に直接水を届けることで蒸発を抑え、水の使用効率を高めている。
水資源が極めて限られている地域では、こうした取り組みが世界各地で広がり始めている。その一例が、処理済みの排水を農業用水として再利用する方法である。すべての排水が農業に適しているわけではないが、処理された水の中にはリンや窒素といった肥料成分を含んでいるものもあり、灌漑用としてはむしろ好ましい場合もある。
このような再利用の発想は、「段階的活用(cascading use)」という広い概念の一部に位置づけられる。段階的活用では、水を一度だけでなく、用途を変えながら何度も利用する。
たとえば、エネルギー生産で発生した蒸気は、凝縮水として再利用され、その後冷却や洗浄に使われ、さらに適切に処理すれば灌漑にも転用できる。このように、1滴の水から得られる価値を最大限に引き出すことで、水資源の効率的な活用と持続可能な管理が実現されるだろう。
Part2では水分野における循環性を高めるために企業が提供している技術やソリューション、さらに排水処理に関する有望な新たな取り組みについてご紹介する。
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writer |
Mr. Andre-Hottinguer

アシル・アンドレイ-ホッティンガー は、過去10年間にわたり大規模な機関投資家向けに公共株式ポートフォリオを管理してきたグローバルエクイティ投資家です。2013年から2020年まで、彼は欧州最大の資産運用会社であるアムンディでシニアポートフォリオマネージャーとして勤務し、高い信念に基づくグローバルエクイティプロセスを開発しました。2018年には東京に移住し、グローバルおよびアジアの株式チームのために、日本およびアジア企業に焦点を当てました。
アシルは、パリのHECでファイナンスを専攻し、経営学の修士号を取得しました。2022年には、フランスにおける40歳未満の才能と将来の経済リーダーを集めた「ショワゾル100」ランキングに選出されました。
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