
日本で大事にされてきた美徳のひとつに、「掃除をすること」があります。
たとえば、お寺の一日は掃除で始まります。廊下を雑巾がけする人、境内の落ち葉を掃く人、トイレの掃除をする人。掃除は心を磨いて整えるための修行の一環とされます。
午前5時30分の街。ビルや公園を掃除する人びとが挨拶を交わします。この役割を担うのは高齢者が多いようです。道路や公共空間の清掃をするボランティアの人たちが活き活きしてみえるのは、「綺麗になる」「余分なものを落とす」すがすがしさからでしょうか。日本の小学校では、生徒が教室の掃除を行います。当たり前と感じることですが、海外では珍しいそうです。ドキュメンタリー映画、『小学校~それは小さな社会』では、掃除をする子どもたちの姿が反響を呼んだとききました。映画と言えば、『パーフェクト・デイズ』では、トイレ掃除をする役所広司が、カンヌ映画祭最優秀主演男優賞をとりました。一年を締めくくる大晦日に、職場や家庭で大掃除をする習慣も根強く続いています。
前置きが長くなりましたが、今回は、「掃除」を通じてマインドフルネスの練習をすることをおすすめしたいと考えます。といっても特別な準備はいりません。いつもの掃除にいつもより少しだけ意識を向け、呼吸を続けながら一つ一つの動作を丁寧に行ってみませんか。机や椅子を丁寧にふく、時には裏側もふいてみる。冷蔵庫の中身を確認し、片付けながら掃除をする。お風呂やトイレをピカピカにする。
「今、この瞬間」に無理なく注意が向くでしょう。環境が整えば、心も整います。「掃除でマインドフルネス」、できるところから、無理のない範囲で始めてみませんか。
マインドフルになれるおすすめスポット
長野県小諸市、布引観音。布引山の岩山にあり、平安時代に建てられたと言われる。木々が生い茂る土の道や石段を上がり、30分ほどで着く。人が少なく静かで、心鎮まる時を過ごすことができる。

Illustration | Sandor Zelenak
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writer |
黒川 由紀子

心理学者、臨床心理士。上智大学名誉教授、黒川由紀子老年学研究所所長。特に高齢者の心理臨床を専門とする。これまで医療機関や福祉施設等で認知症の人への心理療法を専門職やボランティアと共に行ってきた。現在回想法グループ、自分史年表講座、マインドフルネスの会、歌・音楽を楽しむ会等を運営している。年を重ねる豊かさを多世代で共有できたらよいと考えている。
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