Hachi Medida

道を辿る、歴史を巡る

メイン画像

長野県信濃町。動物や虫など、その地に棲まう「小さきもの」にまなざしを向けながら、人の暮らしと重ねて句を読んだ小林一茶が生まれた土地でもあります。東京から信濃町に移り住んだ8 Hachi Media編集長のぶさん。この町にすまう命と人のくらしを季節の巡りとともにお伝えします。


思えばその日は朝から不思議な日だった。信濃町最南端にある霊仙寺(れいせんじ)山と飯綱山への登山口にあり、戸隠へとつながっている道がある霊仙寺(りょうぜんじ)跡へと向かっていた。途中、急に雪のようにオレンジ色の何かが降ってきた。(後から知ったがカラマツの葉だった。)初めてみる晩秋の光景に目を奪われながら、オレンジ色に染まった色鮮やかな道を辿って、車を走らせ登山口へ。


今は廃道となっているこの場所を、のぶさんは過去に2回ほど訪れたことがあるという。3度目となる今回は信濃町の郷土史に詳しい方がガイドを引き受けてくださった。折角だからと彼女の同僚も参加することに。先ほどまでは晴れていたはずなのに、登山口に到着すると、ふわふわと雪が降り始めた。深緑の森の中、苔生した遺跡に雪が降り積もり、地面が白くなり始める様は、厳かな雰囲気をより一層静寂で包み込むかのようだ。


「道の両脇を見ると少し平地になっている気がしませんか?実はここには社が幾つも建っていたのではないかと言われているんです。」


そう教わって見てみると、確かにそこは拓けているように見える。「以前来た時はただ道を歩いているだけだったから、教わると違った景色に見えてくるね。」と感心したように呟く。何気ない景色にも、歴史があるのだ。


しばらく進むとかつて参道だった名残を感じられる石段が見えてきた。


「この石段は上杉謙信が寄進したと言われているんです。」と説明が続く。教科書や大河ドラマで耳にする名前。その人物が成したことが目の前に残っているということに「つわものどもが夢の跡」とはこういうことなのかと思いを馳せる。


石段を登りきると巨大な桜の古木が現れた。まるで異世界に飛び込んだかのように辺りの空気が変わるのを感じる。荘厳という言葉が相応しい立ち姿。その先には、修験者たちが修行に使っていたと思われる巨石郡になっていた。きっとこの桜は、かつては岩場で修行する修験者を見守っていたのだろう。訪れる人がいなくなっても、この場所を守り続けていたのかもしれない。のぶさんたちは言葉もなく、しばらくその景色を眺め続けていた。まるで過去と繋がろうとするかのように。


霊仙寺跡については研究者が多くないこともあり、わからないことが多いという。詳しく知りたいなら、と古い資料を受け取った。こうして歴史の証人が増えていけば、忘れられてしまった信濃町の新たな一面が、見えてくるのかもしれない。町の楽しみ方が、また一つ増えたのだった。

llustration | Izumi Iwashiro

すまうもの。くらすもの。」のイラストは信濃町在住アーティストの方々によるものです

▼次回のお話

▼前回のお話

writer | 

8 編集室

Hachi Medida