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第13回 リサイクルプラスチック材の利用率への規定 #2

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気候変動、資源循環、サステナブル製品、環境表示など広範囲に渡るEUの環境規制。ともすれば無機質で難解なものに捉えられてしまうことも。けれどもEUの環境規制が世界的に影響することは少なくありません。今のEUを知ることで日本企業の未来を予想する。この連載では、その手がかりとして2020年から2024年までの「欧州グリーンディール」を取り上げます。


【欧州駐在体験談】欧州のゴミ箱を観察して楽しもう!

欧州に駐在中は、欧州各国へ旅行に行くことが楽しみの一つであることは、第3回でも述べました。私が欧州各地を訪れた際は観光名所を回るだけでなく、街中に置かれているコンテナやゴミ箱を観察することも楽しんでおりました。そんなことは気にせずに、旅行をしっかり楽しめと言われそうですが。。。

 第9回では環境都市であるオランダのアムステルダムを訪問した際の感想を記載しました。アムステルダムで様々なものを観察している中で、写真①を撮影しました。この緑色のコンテナにはPreZero社のロゴマークが貼られていました。当時この会社については、名前はどこかで聞いたことがある程度の認識でしたが、この写真を撮った際に初めて意識するようになりました。

 この会社はリサイクル事業を欧州10か国以上で手掛ける有力企業で、プラスチックのペレットも販売しております。私はそのような経緯で興味を持ったため、前回でも紹介したプラスチック展示会(FAKUMA展)ではPreZero社のブースを訪れました。

 写真②はアイスランドのケプラヴィークで見つけたゴミ箱です。Íslenska Gámafélagið社というアイスランドの廃棄物処理業者です。この会社は他国には進出しておらず、アイスランドのみで事業を行っているローカルの企業のようです。

 廃棄物は条約や規制等で国境をまたぎにくく、アイスランドのような島国は、基本的に自国内で発生した廃棄物しか取り扱うことができません。そのため、事業拡大のために廃棄物処理量を増やそうと思うと、自国内でのシェアアップを目指すか、他国へ進出するか、になってしまいます。

日本もアイスランドと同様に島国です。それに加えて、県をまたいでの廃棄物の運搬・処理は、制度上は可能ですが、自治体ごとの許可取得や地域事情により、実務上は難易度が高いケースがあります。

 そんな折、日本では2024年公布の「再資源化事業等高度化法」により、廃棄物処理法の許可制度への特例が広がったため、喜ばしく思っております。特例要件などの詳細は、環境省の「認定基準検討ワーキンググループ」で検討されている様子であり、注目ポイントです。


前回は、EUにおいて、個別の産業ごとにサーキュラーエコノミーに関する環境規制を一覧表に整理しました。その結果、「動脈側でのリサイクルプラスチックの利用率」の義務は包装産業と自動車産業にあり、自動車業界にフォーカスして解説しました。

今回は、包装産業における動脈側でのリサイクルプラスチックの利用率の義務について解説したいと思います。

(1)包装関係のリサイクルプラスチックの利用率の規定

前回の冒頭で示した一覧表に包装産業へのEU環境規制として「包装廃棄物規則(PPWR)」「シングルユースプラスチック指令(SUP)」を記載致しました。

他の関連規制も含めて、以下の表に「動脈側でのリサイクルプラスチックの利用率」に関する目標を整理いたしました。

法律

対象

リサイクルプラスチック

包装廃棄物規則(PPWR)

一般包装

2030年:35%

SUPの

2030年:30%

シングルユースプラスチック指令(SUP)

シングルユースのPETボトル

2025年:25%

EUタクソノミ規則

一般包装

2028年迄:35%

イギリスの プラスチック課税

一般包装

2022年施行済。

第4回にも登場した「EUタクソノミ規則」は、グリーンな経済活動を定義するルールで、投資家がサステナブル投資を判断しやすくするために導入されました。気候変動対策、再エネ、サーキュラーエコノミーなど、幅広い活動が対象です。

 包装がグリーンだと見なされるためには、リサイクルプラスチック利用率が2028年迄は35%以上、それ以降は65%以上となっております。「包装廃棄物規則(PPWR)」などの他のEU環境規制と数値目標は同等ですが、時期が早めになっております。

私の感触では、EUタクソノミのグリーン定義には法的拘束力があるわけではない(義務ではない)、ので、他の環境規制よりも高水準な要件が書いてあることが多い印象です。

 また、EU加盟国ではありませんが、イギリスには2022年からプラスチック課税という国内法があります。スペインでも2022年から始まり、イタリアも検討中のようです。イギリスでは製造者、輸入者が年間10トン以上の場合は、重量当たりでプラスチック課税がかけられます。

しかし、リサイクルプラスチック利用率が30%を超える場合は課税が免除されます。マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、化学変性されていないバイオマスプラスチックは、カウント可能です。

(2)包装のリサイクル可能な設計要件

「包装廃棄物規則(PPWR)」には上記のリサイクルに関する内容の他、実に広範囲に渡って包装に関する規制を定めております。例えば、包装のリユース、デポジット・リターンシステム、拡大生産者責任、過剰包装の抑制、ラベリング制度、PFASなど懸念物質の使用抑制など、多岐に渡ります。詳細な解説は、以下の農林水産省のブリュッセル事務局などの資料をご参照頂ければと思います。

https://www.eu.emb-japan.go.jp/files/100788023.pdf

今回、1つだけご紹介しておきたいのが、包装のリサイクル可能な設計要件についてです。包装にマテリアルリサイクルの難度に関する設計要件を定め、この「リサイクル性能要件」が等級A、B、C、C未満でランク付けされます。

2030年以降はA、B、C等級、2038年以降はA、B等級でないとEUで上市ができません。また、これら等級によって拡大生産者責任のルールで排出事業者が支払うべき金額も変わります。

 「リサイクル性能要件」に関しては、包装材料と包装が使われる用途別に設定されます。例えば、プラスチック包装においては以下のような材と用途のカテゴリがあります。以下の他には、PP、PS、PVC、生分解性などのプラスチックもカテゴライズされています。

  • PET硬質のボトル/フラスコビン

  • PET軟質のフィルム

  • PE硬質の容器/ボトル/トレイ/ポット/チューブ

  • PE軟質のフィルム(複層材・複合材を含む)

  • 軟質材料(複合材含む)のパウチ/ブリスター/熱成形パッケージング/真空パッケージング/フレキシブル中間バルクコンテナ/バッグ/ストレッチフィルムの包装

 上記のように、EUがリサイクルすべき対象として考える包装として、複層材・複合材についてもきちんと明記されております。EUではこれらの難リサイクル材の再資源化も考えており、2027年にこれらの包装に関する「リサイクル性能要件」細則で定める予定です。

株式会社esa難リサイクル材をマテリアルリサイクルしたReplaを扱っており、この細則の内容によっては、難リサイクル材も含むリサイクル材全体の市場が活況化すると考えており、今後の動向を注目しております。

(3)いつリサイクル材の採用を検討するべきなのか

欧州駐在時に私は、「リサイクル材への切り替えはいつ検討を開始するべきか」という質問を受けた際には、毎回「今すぐ」と答えておりました。以下に理由を書きます。

近年、欧州でも日本でも自動車業界の方々とお話すると、前回紹介したEUのELV規則の影響を受けて、「既にリサイクル材の奪い合いが始まっている」という言葉を聞きます。日本企業も例外ではなく、自動車メーカーのほとんどはEUに輸出しているので、EUのELV規則に従う必要があるためです。

包装材に関して言えば、私の欧州駐在中はやはりEUに製品を輸出している日本企業の方々は、「PPWR」の影響を既に受けているようでした。自社の製品を梱包するプラスチック資材をリサイクル材へ切り替える事例を見聞きしました。

その時に出会った方々は、「PPWR」だけではなく、将来的にプラスチックも対象になるであろう「CBAM」(※第3回参照)の影響も気にしているようでした。要するに今のうちにリサイクル材に切り替えておかないと、将来(早くて2030年頃)、自社製品にかけられるEU関税が高くなるかもしれない、というホラーストーリーの側面をシミュレーションしていたようでした。

 一方で、EUへの輸出品があまりない日本企業の間では、それほど包装のリサイクル材切り替えへのプレッシャーはないと聞きました。ですが、私は2027年頃には日本市場も、第11回で語ったような「ブリュッセル効果」で影響を受けると考えております。

上述したように、欧州委員会から2027年に「リサイクル性能要件」の細則が出ます。これが出た後は、各社が「どういったリサイクル材を使えばサステナブルと見なされるか」が判明するので、それらを満たしたリサイクル材が奪い合いとなり価格が上がってしまうと考えます。

さて、この2027年の「リサイクル性能要件」の細則がどのような内容になるか、現時点において予想できる方法があります弊社ではこうした動向分析に基づいたアドバイザリーや、リサイクル材採用に向けた検討や協業のご相談も承っております。ご関心のある方は株式会社esaのWebサイトのお問い合わせフォームより私にお声がけください。

次回は、欧州のバイオマス動向に関して解説いたします。

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米久保 秀明

2005年に東京大学大学院修了。キヤノン株式会社入社後、レーザービームプリンタの製品開発に14年間従事。その後、旭化成株式会社で資源循環に関するプロジェクトに従事し後に、ドイツに駐在。4年弱の間、欧州におけるサステナビリティ全般の動向調査に携わる。うち2年間は、ブリュッセルのNPO法人であるJBCE(在欧日系ビジネス協議会)にて、気候変動ワーキンググループ担当の事務局員を兼務。2025年4月より、プラスチック資源循環を推進するスタートアップ、株式会社esaに参画。

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