Hachi Medida

第15回 エピローグ

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気候変動、資源循環、サステナブル製品、環境表示など広範囲に渡るEUの環境規制。ともすれば無機質で難解なものに捉えられてしまうことも。けれどもEUの環境規制が世界的に影響することは少なくありません。今のEUを知ることで日本企業の未来を予想する。この連載では、その手がかりとして2020年から2024年までの「欧州グリーンディール」を取り上げます。


「三流は本から学ぶ。二流は歴史から学ぶ。一流は人から学ぶ。」

これは、私が新卒でキヤノンに入社した際、新人研修で一緒だった同期のY田君が口にした言葉です。当時の私は、その言葉に少なからず衝撃を受けました。というのも、特に学生時代は自分が本や論文を読み漁る、彼の言う三流の域にとどまっているような気がしていたからです。

「なるほど、一流は“人から学ぶ”のか」と納得しました。自分もキヤノンの業務に関係のあることは本でも勉強しながら、配属後は先輩たちに色々なことを教わろうと思いました。

しかしそれだけでは終わらず、実はこの言葉には続きがあって、Y田君は次のように言いました。

「超一流は自然から学ぶ。」

これは正直なところ、ピンときませんでした。仙人や哲学者か何かの話かと、どこか他人事のように感じていたのです。あれから20年近くの時が流れ、今ようやくY田君の言っていたことが、わかったつもりになってきました。

人から学ぶ、ということ

この「教養としての欧州グリーンディール」シリーズも、いよいよ今回が最終回となります。ここまでの記事は、もちろん私自身が文献にあたり、EU政策を読み解いてきたものです。しかし、最も本質的な知識や視点は、やはり「人から学んだ」ものにほかなりません。

前職のAsahi Kasei Europe GmbHの同僚の皆さま、JBCE(在欧日系ビジネス協議会)の事務局員やメンバー企業の皆さまには、公私にわたり多くの示唆や知恵をいただきました。

皆様と様々な場面で交わした会話の中に、欧州の全体像が見えるような視点が詰まっておりました。人から学ぶとは、単なる知識の受け渡しではなく、世界の見え方そのものを変えてくれる力を持っていると痛感しています。例えば、第4回の【欧州駐在中の体験談】で述べたような俯瞰化は、自力だけでやろうとすると長時間必要になりますが、人から学ぶと一気に進むことを経験しました。

自然から学ぶ、ということ

その後、「自然から学ぶ」という言葉についても、その後自分なりの解釈をするようになりました。

Y田君の言う「自然」とは単に山や森の風景ではなく、自身の周囲で自然発生的に起きることであると、私は捉えております。つまり、生活の中での出来事や、自分の中に発生する感覚や疑問などから学ぶことが、「自然から学ぶ」なのではないかと思いました。

そこで、特に欧州駐在中においては、欧州の日々の生活で見たモノ、欧州人と交わした会話の中、現地における日本文化など、多くの事象の中から仕事のヒントを探すことを期待しておりました。

さて、ここで、これまで私の記事を毎回読んでくださった方に対する質問です。

第2回の「干上がったライン川を無理やり通過する船」、第6回第7回で紹介した「欧州委員会・ベルレモンのバナーの変遷」、第13回の「欧州で見つけたゴミ箱」の写真は憶えていますか?

実は、これまでの連載で毎回紹介してきた冒頭の「欧州駐在中の体験談」は、私自身が「欧州生活の中で見つけた自然」から得たヒントの記録であります。読者の皆様の中で、私が感じた自然を疑似的に体験いただく狙いがありました。

疑似的に「自然から学ぶ」ことで、「本論のEU規制の解説も頭に入りやすいのではないか」、という仮説の検証です。読者の方々の反応を聞くと、どうやらこの仮説は正しかったと感じております。

次の機会へ

以上のように、私は欧州でサステナビリティ関連業務に携わりながら、「人」と「自然」から学ぶことも意識しておりました。そのような過程を経て、サステナビリティ業務が知識獲得、動向調査、規制対応だけで終わるべきものでないと感じるようになりました。

欧州からサステナビリティ関連のマクロトレンドを俯瞰した上で、いかに「機会探索」を行い、そして「実際の行動」を起こすか・・・。

そのような想いから、写真に示すように、欧州駐在期間の締めくくりとして、「サステナビリティの機会探索」をどのように行えば良いのかについてのプレゼンを行いました。このプレゼンのオファーを受けたのは、まずは私自身が何か「行動」すべきだと感じたからです。

結局、日本に本帰国後は、より具体的な行動へと昇華させるべく、私はスタートアップへと転職しました。なお、今回の主役であるキヤノン時代の同期Y田君も、私より先にスタートアップに転職してCxO職に就き、新たな挑戦を始めているようです。

では、この記事を読んでくださった皆様、特にサステナビリティに関わっている方々は、今後、何をどう行動されますか?思いつかない、という方は、まずはこの記事を周囲へ広めることから行動して頂ければ幸いです(笑)

最後に

この連載が読者の皆様の「教養としての欧州グリーンディール」を身につける一助となっていれば嬉しいです。連載の途中に、欧州駐在中に出会った方々から、「あの記事は、お金が取れるクオリティだ。」と言ってもらえたことは何よりの励みでした。

また、過去の同僚が、外へはみ出し、何かを生み出そうとする姿に勇気と活力を頂いております。そのような尊敬する方々が、もう大企業の看板を持たない私に対し、「最近どう?一緒に何かをやろう。」と声をかけて頂いて感謝しています。

また、約4か月間にわたり全15回の連載をお読みいただいた皆様に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。

2025年7月
株式会社esa 米久保秀明

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米久保 秀明

2005年に東京大学大学院修了。キヤノン株式会社入社後、レーザービームプリンタの製品開発に14年間従事。その後、旭化成株式会社で資源循環に関するプロジェクトに従事し後に、ドイツに駐在。4年弱の間、欧州におけるサステナビリティ全般の動向調査に携わる。うち2年間は、ブリュッセルのNPO法人であるJBCE(在欧日系ビジネス協議会)にて、気候変動ワーキンググループ担当の事務局員を兼務。2025年4月より、プラスチック資源循環を推進するスタートアップ、株式会社esaに参画。

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